料理とラジオ

エッセイ

憧れの一人暮らしを始めてもうすぐ1年になる。

大学生の頃からやってみたい気持ちはあった。
しかし、お金はかかるし、大学に通うことのできる距離だったので諦めていた。
今振り返ると少し無理をしてでも、短期間でもやればよかったなと思う。

今回は一人暮らしを始める前に一番不安だったことを書きたい。

一番の懸念事項

私が一人暮らしにおいて、一番懸念していたことは料理だ。
なぜなら、実家では一切料理をしたことがなかったからだ。

私の母がとても優ししかったのだ。
料理は全て作ってくれた。

朝起きれば、夜家に帰れば、いつもご飯が出来上がっていた。
本当に優しい母だ。
そうやって日々を紡ぐことは簡単なようで難しい。

ただその母の優しさが仇となった。
私の料理能力は一切向上することはなかった。
やはり実践の場がないと人は成長しないのだと改めて気づかされる。

高校の家庭科の授業でも、料理ができるクラスメイトを眺めるだけだったし、たまに出される料理の宿題も、結局母のサポートが8割くらいを占めていた。

料理ができない、というよりもやったことがなかった。
だからできるわけがないと思っていた。

偶然のプレゼント

一人暮らしを始めた当初、冷凍食品とレストランの二刀流でいくつもりだった。
さすがに毎日外食はお金がもたない。
そこで冷凍食品だ。
ただ時間の節約にはなるし、この組み合わせがベストだと思っていた。

入居して1週間くらいだっただろうか。
同じ会社の先輩からメッセージが入った。

「料理器具が余ってんだけど、貰ってくれない?」

この言葉が間違いなく私の転機となった。
冷凍食品とレストランで食事を済まそうと思っていた一人暮らしの部屋に料理器具は電子レンジしかなかった。
せっかくもらえるならもらおうと、貧乏性な気持ちもあり、ありがたくいただくことにした。

私がもらいに先輩の部屋へ行くと丁度料理をしている所だった。
鶏の手羽先が入ったスープだ。
その姿がとても意外でかっこよく見えたのを覚えている。
第一印象がスカジャンを着こなすTHE男という感じで、料理している姿を想像できなかったからだ。

話を聞くと、どうやら高校時代からよく家で作っていたらしい。
そして食器や酒器を集めるのが好きで、今回新しい鍋を買ったとのことだ。
スープを作っている鍋をよく見ると、綺麗で落ち着いたグレー色でシュっとしたものだった。
初めて料理器具をかっこいいと思った。

そして私は先輩から鍋とフライパンとまな板とコップを貰った。
この時に私も一度くらいは料理をしようと決心した。
メニューはもちろんあの鶏の手羽先が入ったスープだ。

最高の組み合わせ

意外な発見だった。
実際やってみると結構楽しかった。

料理の前評判はとても低かった。
兄や何人かの友達は一切料理をしないと言った。
めんどくさいからだそうだ。

私も毎日食べなければいけないのに、日々料理するなんて苦行のようだと思っていた。

でもやっぱり自分で作ったものは美味しく思えるし、達成感もある。
材料を包丁で切ったり、おたまで鍋をかき回したりする作業も、パソコンでのタイピングや運動とは異なる動作で案外気分転換になったりする。
少なくとも洗濯よりはずっと楽しい。

最近そんな料理と最高の組み合わせを発見して、更に料理を楽しむことができている。
ラジオだ。

私はラジオでオードリーのオールナイトニッポンを聞きながら料理を楽しんでいる。
どちらもながら作業でできる、最高の組み合わせだ。
2人の会話を楽しんで、自分の料理も味わえる。

唯一の弱点は火を使う時だ。
ぐつぐつ美味しそうな音を奏でられると、会話が聞き取りづらくなるのだ。
会話を楽しむか、料理を楽しむか。
贅沢な悩みである。

料理とラジオ。
料理が苦手だという方はぜひこの組み合わせで楽しんで欲しいなと思う。
そして料理だけでもやってみると案外楽しいかもしれない。

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