幼稚園からの友達
集合時間まであと1分…。
私は二重の意味でドキドキしている。
1つ目は12年ぶりに幼稚園、小学校時代の旧友2人と再会するからだ。
同じマンションで、小さい頃は毎日顔を合わせて遊んでいた。
しかし私が引越しをしてしまい、小学生から社会人になるまでずっと疎遠になっていた。
環境によって私の生活は大きく変わってしまう。
寂しかったけれど、幼い私にはどうしようもないことだった。
2つ目はこんな貴重な出来事なのに、遅刻しそうだからだ。
遅刻は厳禁だと自分ルールで言い聞かせているのに。
でも渋谷は関西出身の私にとって複雑すぎる。
そして電車の遅延が頻繁に起こりすぎではないだろうか。
駅員に道のりを確認してから駆け足で向かった。
走る時の革靴は邪魔で仕方ない。
ヒールで颯爽と歩く女性には頭が上がらない。
目的地の宮下パークには一応時間きっかりに着いた。
LINEを見ると他の2人は5分ほど遅刻するようだ。
少しだけ安心した。
他の人には影響を与えずに済むようだ。
当初約束していたレストランはなぜか見つけられなかったので、
屋上にあるドラえもんのモニュメントを集合場所にしてもらった。
会うのは凄く楽しみだけれど、
正直、失礼ながら顔がわかるか不安だった。
1人は4年ぶり、1人はなんと12年ぶりだ。
言い訳もしたくなる空白の時間が私たちの間にはある。
しかし、杞憂に終わった。
私が10mくらい離れた所から旧友1人に気付いたからだ。
目が良いとか、記憶力が良いとかそんなんじゃない。
不思議と雰囲気ですぐにわかった。
スポットライトが当たっているかのように、私の目はすぐに友達の方へ向いた。
真昼の舞台に立つ本日の主役は渋谷の人混みの中でも輝いて見えた。
驚いたことに友達の姉も一緒に来てくれていた。
偶然渋谷に用があり、一目見るために会いに来てくれたそうだ。
旧友以上に記憶はかなり薄れていたけれど、私はとても嬉しかったし、彼女も凄く喜んでくれていたと思う。
もう1人の友達も無事合流し、互いを懐かしんだ。
変わっているけれど、変わっていない。
忘れていたけど、忘れていない。
1人は別の外せない用事があったので、すぐにお別れとなった。
もう1人の友達と近くのカフェに入り、これまでの空白を埋めるために沢山話した。
共に遊んでいた時のこと、学生時代のこと、今の仕事のこと。
久しぶりに会ったという気まずさなんて忘れて、気の済むまで話し合った。
あっという間に2時間が過ぎた。
まだまだ話していないテーマもある。
聞きたいこともある。
そもそももう1人の友達とは落ち着いて会話できてない。
本当に友達はかけがえのない存在だ。
旧友じゃなくて友達だ。
色んなことがあった新社会人生活の中でも、指折りの思い出だ。
翌日送ってくれた写真の私は、ここ最近で1番の笑顔だった。
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