縁のない新しい世界に足を踏み入れるために

エッセイ

上京して初めて地域のイベントに参加した。
とある日曜日のことである。


私が所属している会社が主催の小さなイベントだ。
目的は「地域の活性化」。


どうやら私の3つ程年上の先輩が主催者らしい。
同じ会社の者として話しかければ、これまでお会いしたことはないけれど、優しく対応していただけるのではないかと考えた。

それに単純に街づくりに関わる活動自体に興味がある。
これまで縁のない世界だけど、関わってみたい。

ただいざ当日になると、イベントへ訪れることが億劫になってきた。

ネガティブな不安ばかりが頭によぎるからだ。
主に「会社の先輩方に邪険に扱われたらどうしよう。」とばかり考えていた。

会社の人と言えど、部署が全く異なるので相手の先輩は私の顔も名前も知らない。
とにかく粗相がないようにしようと決めた。
だから事前にHPで公開されていた情報をしっかり頭に入れてイベントへ出掛けた。


イベント終了30分前に会場へ着いた。
終わってからの方が精神的にもゆとりが生まれて私の対応をしてくれるかなと考えたからだ。

遠くから見るとすぐに先輩を見つけた。
読み込んだHPにかっこよく映っている先輩が目の前にいる。

街で偶然芸能人を見かけたような気分だ。
はじめは声をかける勇気が出ずに、イベント会場を何往復もしていた。

「決して私はイベント主催者に声をかけるような人ではありませんよ。イベントを楽しみに来た普通の一般客ですよ。」

怪しい人ではないことを誰かに証明したくて、真剣に立ち並んでいたブースの商品を真剣に眺めるフリをしていた。

しかし、決して商品の内容は頭にはいってこない。
5分くらい、オロオロとしていたところで、声をかける決心がついた。

それほど大きくない会場なので、1人で何かを購入したりするでもなく、5分も練り歩いていると充分に怪しい。
それに今日の先輩に私の目的は声をかけることだ。

「あの~、すみません。私~。」
自己紹介をすると先輩はすぐに察してくれた。
同じ会社というのが効いていたのだと思う。

あと偶然自分の同期が先輩と同じ部署にいて、少しだけ話が弾んだ。
しかし、私の自己紹介が言葉足らずで、会話がとまってしまう。

今思えば「地域活性化のイベントの主催の方法を教えて欲しいです!」
みたいな、話しかけた目的をすぐに伝えるべきだったなと思った。

自分のコミュニケーション力の無さが仇となった。
しかし、すぐに帰宅せずにその場にとどまり、何度も話しかけること、自分の考えを伝えることで先輩も理解を示してくれた。

迷惑だったかもしれないけれど。
色々と話した結果、私が片付けを手伝う代わりに、30分ほどご飯に行こうということになった。

終了後の食事ではたくさんのお話しを聞けた。
私がイベントの主催者側として参加できるのではないかという話も少しでた。

びっくりした。イベント主催なんて、これまで考えたこともなかった。

それに単純にプライベートのことでも盛り上がった。
30分という短い時間だったけれど、とても充実感のある時を過ごせた。

これまで縁のない新しい世界にこれから飛び込んでいける、そんな予感がした。
気になることがあれば勇気を持って話しかければ良いんだ。
すると自分一人だけでは考えつかない、世界があるなと実感した。

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