憧れの友達

エッセイ


私には小学生の時から憧れの友達、Mがいる。

Mとは小学生の2年生頃に出会った。
それから高校まで同じ学校に通った。
共にサッカー部に属し、長い時間を過ごしてきた。

家が近いこと、同じ塾に通っていたこと、共通点はいっぱいある。
ずっと仲が良かった。
しかし異なる大学への進学が決まったため、高校卒業と同時に毎日会うことはなくなった。
それでも年に1,2回は必ず顔を合わせ、何時間も話を交わす。
そんな関係性だ。

小学生の時から明るい光を放つ、憧れの存在だった。
私が欲しいと思うものを全て持っていた。

サッカーができること。
弱かった私らのチームは、エースのMにボールを預けてゴールを決めてもらっていた。
2022年W杯のサッカー日本代表の「戦術三笘」以上に頼り切りだった。

勉強ができること。
学年でも上位1割に入る程、勉強ができた。
私よりずっと偏差値の高い大学に入学した。

面白いこと。
授業中での一声や人前での漫才で笑いをとっていた。
Mの周囲はいつだってにぎやかだった。

そして皆の人気者であること。
これだけ書いたら誰だってMが人気者であることは想像つくだろう。

自分がそんな立場でも決して驕ることのない人間だ。
私より大きなことを成し遂げても必ず謙遜して話す。


そんなMと先日、旅行に出かけた。
大学卒業を控えた彼が社会人になると、旅行なんて贅沢なことができなくなると、ふと思ったからだ。
思い立ったその日にlineをして、3日後には飛行機を予約した。
この機会を逃したくない。


全ては計画通りに進まなかったけれど旅行は最高に楽しかった。
2泊3日、ずっと話が尽きなかったからだ。

様々な会話を繰り返す中で、私は自分のある変化に気付いた。
憧れのMと比べても、自分に良いところがあるなと思えるようになったことだ。
小学生時代に友達と比較してはネガティブになっていた当時の私にはなかなかの成長だと思った。

もちろん相変わらずMはかっこいい男だった。
自分が歩みたい将来の設計図は、大きくて鮮明だった。
そして確実に歩を進めている。

今の私のレベルでは想像できない環境へ、次の4月から足を踏み入れようとしている。
そして、その環境に馴染んでいくための知識や習慣が既に備わっているように思えた。

やりたいことなんてわからないまま社会人になってしまった自分とは大違いだなと思った。
今の状況にしがみつくために、見切り発車で必要そうなものに手を出す私には憧れる。


小学校時代から、Mには叶わないなと思う。
しかし同じ環境に身を置かなくなった6年間の大学、半年の社会人生活を経ることで、私の強みも育っているのではないか。

その強みとは未知なものへ挑戦する勇気だ。
自分が印象に残った話をしている最中にMが指摘してくれたのだ。
私はMが持ち合わせていないものを持っているのだ。


ずっと近くにいて仲の良い友達だ。
しかし、いわゆるできるMと比較すると時々引け目に感じることがあった。

そんなMにも苦手なことがある。
Mの苦手なことが私の得意なことだったりする。


だから私達は互いに刺激しあえる存在だ。
私は今回の再会でやらなければいけないこと、やりたいことが改めて見つかった。
そしてMにも見つかったのだと、私は以前より思えるようになった。

Mはきっと私の憧れの存在であり続けると思う。
立派な夢があるし、止まる気配はない。
そんなMの影響を受けて異なる道を私も歩き続けようと思う。


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