大勢の飲み会では、何回席移動できるか

エッセイ

私は飲み会が苦手だ。
正確に言うと5人以上の大勢の飲み会が苦手だ。
大勢いる中では自分の話ができないからだ。
ずっと無言でいると、どれだけ周囲が騒がしくても楽しめない。
むしろ周囲が騒いでいるほど、自分の孤独感がより一層強調されて楽しめなくなる。
今回の文章はきっと内向型の人ならば共感してくれるはずだ。

勇気を出す必要がある大勢の飲み会

この間年の初めに飲み会に参加した。
いわゆる新年会という奴だ。
全員で15人ほど参加するらしい。
こんなに大勢の飲み会は1年振りとかではないだろうか。

同じ会社の先輩が誘ってくれた。
同じ職種の者達で集まろうというわけだ。

どうやら奢って貰えるらしい。
それに会社内に知り合いがほとんどいない私にとって貴重な機会だ。

すぐに参加すると決めた。
同時に無事に楽しめるかなと不安もよぎった。

冒頭の通り、苦手だからだ。
理由は多分いくつかある。

「そもそも声が届かない」

まず「そもそも声が届かない」からだ。
私の声は低くて小さい。
中学生くらいの頃から自分でも認識していた。
なかなか大きな声を出せないのである。

部活動をする時や文化祭で劇の練習をする時は
「もっと大きな声を出して!」と言われたけれど、自分は苦手だった。
並の練習では上達しなかった。
高校では声が低くて、そのモノマネをされてイジられていたくらいだ。

私の声の大きさだと、賑やかな居酒屋で、テーブルの端から端まで声を届けることが正直できない。
声が聞こえなくて、何度も聞き返されることもある。
勇気を出して話しかけて、聞き返されること恥ずかしいことはない。
そしてそんな時ほど、相手にしっかりと届けたいメッセージを発していない。
声が小さな人にとって、大勢の飲み会はアウェー過ぎる。

「誰に話せばよいかわからない」

次に大勢の飲み会には同じ机に人が多くて「誰に話せばよいかわからない」からだ。
この感覚は自分でも正直説明することが難しい。
あまり把握できていないからだ。

机の周りに人が多すぎる。
情報量が多すぎるのだ。
だから恐らく頭の中がプチパニックになっているのだと思う。

また、人によって自分なりの対応するスタンスがある。
簡単に言うと人によって態度を変えているのだ。
具体的には先輩には敬語、同期や後輩にはタメ口みたいなことだ。
その対応の変化が細かくあって、自分の中でエラーを起こしているのかもしれない。

自分でも把握できていないけれど、大勢の飲み会に行く度に思う。
「一体私は誰に話しかければよいんだ!?」

「自分と同じ温度感で言葉が届かない」

最後に「自分と同じ温度感で言葉が届かない」からだ。
これが私の中で一番割合が大きいと思う。

自分が真剣に言葉を伝えても、大勢の前だと、茶化されることが多いのだ。
1対1で話す時なら恐らく伝わるものであっても、大勢の飲み会では、大勢用の態度を取らなくてはならない。
その場の”ノリ”があるのだ。

大勢の飲み会で、真剣な話をすると、自分は100度で話しても、相手には3度くらいでしか伝わらないと思う。
逆に自分が50度くらいで笑いを誘った言葉を言うと、300度くらいで場が沸騰することも、ごくまれにある。

大勢の前では面白さに偏ったものが良い。
大勢の前では真剣な話なんて敬遠される。

しかし、私は真面目な性格のためか、ついつい本気で返してしまうことが多い。
大勢の前ではなかなかボケたり、冗談を言う勇気がない。
皆の前ではスベりたくないのだ。

私の理想は真剣な会話の中に、時々くすりと笑わせられるような感覚で話をしたい。
するとやっぱり大勢の前ではどうも苦手意識が芽生える。
2、3人での飲み会は逆に大好きだ。

内向型にとっての大勢の飲み会のメリット

改めて、大勢の飲み会は私は苦手だ。
しかし、良い所もあるから、私は出席を決めたのだ。

それは「普段仲良くない人とも、一気に距離を縮めることができる」からだ。

美味しい食事を囲んで、お酒が入っていると、皆堅苦しい雰囲気がとれてフランクになる。
真面目で内向型な人ほど、この機会を逃すわけにはいかない。

普段なら少しずつしか、仲良くなれない所を、飲み会を利用すると距離を縮めやすい。
OFFの状態だと思わぬ一面を知って、親近感が湧くこともある。

初めましての方とも仲良くなりやすい。
仕事で出会うよりも、飲み会で出会う方が仲は深まる。
大勢の飲み会も悪い所ばかりではないのだ。

大勢の飲み会を楽しむために

苦手な大勢の飲み会を楽しむために、私は1つ対策を思いついた。

「席を移動する」ということだ。

まず大勢の飲み会でも、大勢のノリに乗らないで、1対1で会話を楽しむ方法がある。
それが隣の席の人との会話だ。

隣の人とであれば、大きな声を出す必要もないし、「隣の人」と話しかける相手も明確。
そして真剣な会話をしても、同じ温度感でメッセージを伝えることができる。

さらに席を移動することによって、その場のノリについていく必要がなくなる。
ノリは同じメンバーが長時間いることによって生まれるものだ。
そこに自分が所属しなければ、ノリはわからなくなるが、ついて行かなくともよくなる。

そして大勢の飲み会の良い所は、単純に人が大勢いることだ。
席を移動することによって、顔を合わす回数を重ねられる。
「席を移動する」ことは良いことだらけではないだろうか。



勿論、席を移動することにも勇気は伴う。
だけれど、その勇気を上回るメリット、楽しさを考えれば、きっと重い腰は上がるはずだ。

次の飲み会が少しだけ楽しみになってきた。
まだ予定はないけれど。

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