みなさんの原動力は何でしょうか?
誰かの目線を気にして、他人の期待に応えるために行動していないでしょうか。
本当に自分のやりたいことをできているでしょうか。
今回が読んだ作者:朝井リョウ「スペードの3」は、今の自分にもどかしさを感じながら生きる3人の女性が主人公だ。
それぞれが自分の人生を変えるタイミングを窺っている。
「周囲の目が気になる。」「今の自分を変えたい。」「自分らしく生きたい。」
と思う方々におすすめのの小説でした。
あらすじ・要点
ある劇団のファンクラブをテーマとした3編の短編小説。
劇団のスター香北つかさ。そのファンクラブ「ファミリア」の代表者である美千代。その美千代と同じ小学校に通っていた明元むつ美。3人が各編の主人公となる。
同じ出来事を共有しているが、それぞれの立場から見ると全く異なるように思える。異なる過去を歩んでいるので1つの現実に対しても3通りの感じ方がある。
3人とも現状に違和感を持ちつつも、変わるための一歩を踏み出せないでいる。変わりたいのに変われない。そんな想いにみなさんも共感できる1冊だ。
ハートの2
私が一番好きだったのは2編目「ハートの2」だ。
そして勘の鋭いみなさんであれば察していると思う。
この本では、各主人公をトランプゲーム「大富豪」のカードで表現して、タイトルがつけられている。
前編「スペードの3」で”ファミリア”の長く保たれていた均衡を乱した明元むつ美が主人公だ。
ファミリアというゲーム内での最強のカード=明元むつ美だと思う。
「スペードの3」では敵無しの明元むつ美の、小学生・中学生時代を描かれたのが「ハートの2」だ。
いじめに遭い、もがき続けてきた過去が明らかになる。
誰かの役にたつために行動する明元むつ美
「スペードの3」の明元むつ美は自分の軸があって堂々としている。
スターの香北つかさと容姿が似て、ファミリア内では少し特別な存在だ。
しかし、小・中学生時代は決してそんな強い彼女ではなかった。
小学生の時にいじめに遭った明元むつ美は誰かのために行動する人だった。
何故なら役に立つ働きをすることで自分の存在価値を上げるためだ。
弟と彼の友達が喜んでくれるから、自分の得意な絵を弟のノートに描いていた。
中学時代に初めてできた友達が喜んでくれるから、演劇部で美術担当をした。
小学生時代にいじめられていた彼女の自尊心はとても低かったのだ。
誰かの役に立っているという事実がないと、自分は友達でいられない、そんな思い込みが強い。
自分のために行動する明元むつ美
そんな彼女も日々生活を送ることで大切なことに気付く。
部活の先輩のアドバイスをきっかけに金髪のウィッグをつけた友達。
人気を得るきっかけが欲しくて突然ショートカットにしたスターの香北つかさ。
先輩に褒めて欲しくて部活紹介のイラストポスターを描いた自分。
「自分の行動は全て自分のためでいいのだ」と。
自分が何か行動する時に、誰かのためにという正当な理由を探していたこれまでの自分。
しかし、別に大層な理由なんて必要じゃない。
自分のために。それだけで充分立派な理由だと。
決して醜い欲望ではない。
まとめ
私も特に幼い頃は周りの目がきになってしょうがなかった。
年齢を重ねて、自分だけの時間が少なくなって、残された時間を意識させられる今日この頃は
「自分のために」行動する時間も増えてきたかなと思う。
そんな時に読んだ「スペードの3」は私にとってとても胸に刺さる1冊だった。
「自分を変えたい」と思っている方はぜひ本を手に取って欲しい。
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